もりしたクリニック webレクチャー(1)「心因性難聴」
心因性難聴とは
心因性難聴とは、耳や脳など、聴覚にかかわる領域に検査で異常がないにもかかわらず耳が聞こえない、または聞こえにくいという病気です。子供でも大人でも起きますが、子供の場合、難聴の自覚症状はなくて、学校健診での聴力検査ではじめてわかる場合があります。女性に多く、近年増加する傾向にあります。背景には心理的なストレスのあることがほとんどです。小児と成人では特徴に差がありますので、今回は小児の心因性難聴についてお話します。
小児の心因性難聴
「聞こえにくい」「耳がへん」など、本人が難聴を訴えることもありますが、多いのは、難聴の自覚がなく学校健診で指摘されて医療機関を訪れるパターンです。難聴の程度はさまざまで、ほとんど自覚のない例からまったく聞こえないとう例までさまざまです。ただ、まったく聞こえないという例は稀です。右か左かでは、どちらか片方というより両側に難聴を認める傾向にありますが、まったく聞こえないという例では片側性を示す傾向にあります。症状は一定でなく、良くなったり悪くなったりを繰り返し、病院にかかったときにはほぼ良くなっていて、また2,3週後に悪化するなどということが起こります。それは難聴の程度だけの問題ではなく、片側性から両側性に移行したり、その逆だったりします。ですから、一旦改善したからといって安心すべきではありません。また、他の心因性疾患、たとえば視力障害などを合併することもあり、他の感覚に問題がないか、親は十分に注意を払っておくべきです。
検査
心因性であっても難聴があるのですから、耳鼻科での検査は欠かせません。自覚的聴力検査、他覚的聴力検査、聴性脳幹反応などを行います。心因性難聴の場合、自覚的聴力検査で異常があっても、他覚的聴力検査や聴性脳幹反応は正常であるという検査結果の乖離の見られるのが一般的です。それを踏まえ、心療内科では各種の心理テストを行います。
原因
内因性と外因性に分け
られます。内因性とは子供の身体的要因にもとづくもので、主に知能面が問題となります。内因性に原因のある場合、この知能面で劣る子供に多い傾向にあり、学習障害や多動性障害に付随して見られることもあります。
外因性の原因では、子供の心理・社会的背景に問題のある場合がほとんどです。子供は言語発達が未熟で、ボキャブラリーも少なく、自身の意志を言葉で他人に伝えるということが上手ではありません。そのため、何かストレスに直面したとき、つらい気持ちや助けてほしいというメッセージを言葉ではなく身体の症状として訴えかけてきます。特に、聴覚を含め五感は人間にとって外界との接点であり、「聞こえない」という症状は「聞きたくない」という意思で、「つらい外界から僕を(私を)救って」「つらい外界から逃げたい」という切実な心の叫びである場合が多々あります。いじめ、暴力、受験勉強、両親の不仲、理由はいろいろですが、心因性難聴の場合、子供のまわりに大きなストレスの原因となることがないか注意を払うことが必要です。
治療
低下した聴力に対する直接的な機能回復訓練を行うということは一般的ではありません。まず、子供の知能、性格傾向を把握して、背景にあるなんらかのストレスを明確にし、面接、カウンセリング、行動療法、薬物療法によりストレスを軽減して行きます。
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